
成年後見制度とは認知症などで判断力が衰えてしまった方を保護、支援するための制度です。
家庭裁判所監督のもと支援者(後見人)が本人(被後見人等)に代わって財産を管理したり、契約を代行したりできるようになります。
認知症の家族を支える上では、必要なシーンが多いこの制度ですが、実際活用するにあたっては仕組みが複雑で分かりにくいと感じる部分が多いはずです(私は最初さっぱり意味が分からなかった)
そこで今回は、実際に母の介護を通してこの制度を利用した私が、自分の経験もふまえて、成年後見人制度について解説していきたいと思います。
解説がすごく長くなるので、時間が無い方、概要だけとりあえず理解したい人向けに、分かり易い解説も作りましたの、サクッとこの制度について学びたい方はこちらを参考にしてください。
成年後見制度完全マニュアルの目次
この記事に書いてある事
成年後見人とはそもそも何故必要なのか?
認知症等で判断能力が低下してしまったとしても、日常生活で必要な事は、通常家族がかわりに対応出来ることが殆どです
しかし、金融機関での手続きや不動産の売却など、本人以外では対応できない場面も少なくありません。
本人のために善意で使うお金なんだから問題ないよね?
こういう認識の人が多いと思いますが、法的には例え本人のために使うお金であっても家族が勝手に管理する事は許されないのです。

昔であれば、このあたりは空気間でなんとか対応して貰えたケースが少なくなかったようです。
しかし、トラブルを避けるためにも現在は法的に代理を認められた者(成年後見人)が必要になって来ます。
これはあくまでも一例で様々な理由から、後見人制度が活用されています。
成年後見人制度の申請理由一覧(2014年度)

成年後見人制度のメリット、デメリット
判断能力が無くなった本人のかわりに後見人が代理で財産を管理する事が出来る。
本人が締結してしまった不利益な契約を無効に出来る等、ここまで成年後見人制度を利用するメリットについてはなんと無く理解できているはずです。
とはいえ、成年後見人制度にはメリットだけではなくデメリットも少なからず存在しますのでその部分はしっかり把握してから検討する必要があります。
なぜなら成年後見制度は1度開始すれば基本的には死ぬまで付き合って行くものです。ですからしっかりとデメリットを認識しましょう。
デメリットについては後見される側(本人)と後見する側(家族等)に別けて考える事でより理解が深まります。
被後見人のデメリット(後見される側)

医師等の判断能力が必要な仕事は不可。会社の役員も不可。相続対策も不可。投資等も不可。
元々判断能力が無い状態で利用する制度なのでさすがに医師等をしている場合は少ないとは思いますが、名前だけの役員で報酬を受け取る等の事は出来なくなってしまいます。
後見にを付ける=判断力が無いという事が法的に確定してしまうため、重要な決定が必要な行為は制約されてしまいます。
そのため安易に制度を利用する事は危険が伴います。ですので、しっかりとデメリットの部分については専門家に相談して検討する必要があるでしょう。
後見人のデメリット

被後見人のお金を安易に使えなくなる。使ったお金については報告義務がある(年1程度)報告等が面倒。
公共料金の支払いから重要な契約等、被後見人に必要なお金の管理は全て後見人が責任を持って行う事になり、その使い道についても報告義務がありますので、結構面倒な仕事です。
後見人については専門家に依頼する事も出来ますが、その場合は月に2万程度を目安に報酬を支払う必要があります。
そのため安易に財産管理を目的として成年後見生後を利用すれば逆に時間もお金も失う事になりかねません。
成年後見人制度のメリット、デメリットまとめ
メリットについては比較的分かり易い制度ですが、デメリットについては見えにくく、また人によってデメリットの影響が大きく違います。
しかも後見人というのは1度付けてしまえば、基本的に亡くなるまでその制度を利用する事が前提です。
そのため、制度を利用する上では自分だけで考えずにしっかりと専門家の意見を仰ぐ事が重要です。

法定後見と任意後見。二つの成年後見制度とその違い
成年後見制度と一言で言っても、すでに判断能力が失われている場合に検討される法定後見と、将来判断能力が衰えた時ために検討される任意後見の二種類があります。
この二つがごっちゃになっていると成年後見制度が理解しにくいので違いについて解説します。
法定後見とはすでに判断能力を失ってしまった人を対象とする制度

認知症などですでに判断能力が失われてしまった場合に検討される制度です。
預金が下ろせなくなってしまった。不動産が処分出来なくなってしまった。他にも判断能力が低回してしまい本人の判断だけでは生活する事が困難。
こういうケースに対処するために検討される制度です。
法定後見人=発生している問題に対して検討される制度と考えると分かり易いでしょう。
任意後見人
将来判断能力が失われた場合に備えるために検討される制度です。
判断能力が失われてしまった場合、自分の財産を管理してくれる後見人は自分で選ぶことが出来ません(家庭裁判所が決める)
ですが判断能力が低下する前に後見人制度を利用する(任意後見)ことによって判断能力が失われてしまった際に自分の思いが反映された状況を作る事が出来ます。
任意後見人=将来の問題に対して備える制度と考えるとい分かり易いでしょう。
まとめ任意後見人と法定後見人について
将来自分の判断能力が無くなった時のために、備えておくというの意味がある事だとは思います(任意後見制度)
とはいえ、実際後見人制度で利用されているのは、殆どの場合はおきている問題に対して対応するための法定後見人制度です。
実際の所は判断能力があるうちに後見人制度を検討出来るくらいであれば、預金管理の事、不動産の事などを前倒しで対応しておく事が出来ると思います。
そのため、今後も任意後見の制度と言うのは利用価値がそこまで高くはならないと個人的には感じます。

こちら違いについても詳しく知りたい方は以下で解説しています。
後見人申立~成年後見制度利用手続きの流れと必要書類について
後見人とは一個人の財産や生活を左右する権限を持つ重要な役割を担う人物です。
ですから親族だからと言う理由で安易に後見人になれる訳ではなく決定にはいくつかの手続きを踏む必要があります。

流れとしては上記のような手順になり、通常の場合ですと2ヶ月。長い場合は6ヶ月程度申請に時間が必要な場合もあります。
詳しい申請の手順についてかなり長い解説となりますので以下で詳細に案内しています。
成年後見人申し立てに必要な書類について
・申立書
・本人の戸籍謄本
・本人の住民票
・後見人候補者の住民票
・本人に後見人がついていない事の証明書
・財産目録、収支報告書
・財産目録を証明する資料
・収支を証明する資料
・親族の同意書
・親族関係図
書類の入手先や概要については以下の記事で解説していますので、書類を集める際は参考にしてください。
上記で紹介する書類ははじめて耳にする物ばかりだと思いますし、正直意味が分からず発狂しそうになると思いますが、書類の入手先、書類に解説等は下記ページで詳しく解説しているので参考にしてください。
ただし、正直言って財産目録や収支報告書、親族関係説明図の作成は一般の方にはかなり難い上、不備があればその都度手続きがストップしてしまいます。
ですからコストはかかってしまいますが手続きを専門家に任せる方が個人的にはおすすめです。自分も色々勉強しましたが結局司法書士に手続きをお願いしました。

後見人制度で発生するお金について。手続きからランニングコストまで
後見制度は財産を守るための制度と言っても過言ではありません。
しかし、この制度を使う事自体にお金がかかるため、場合によっては財産を守るために活用した制度なのに、逆に財産を減らす事になってしまうと言うケースも考えられます。
そこで今回は、成年後見制度に必要な費用について解説していきます。
制度が自体が複雑で何にどれくらいお金がかかるのか?というのが見えにくい成年後見制度ですが、手続きにかかる費用と手続きが終わってからの費用。
つまりランニングコストと初期コストの二つに別けて考えると全体で必要なお金が見えて来ます。
後見人手続き費用(初期コスト)
初期コストについては自分で全ての申立を行う場合と専門家に代行してもらう場合の2パターンで考える必要があります。
自分で行う場合(書類作成~申立まで)
6千円~1万円前後 | ・住民表や登記簿等の書類の取得費用。 ・医師による診断所の作成費用。 |
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通常1万円ほど、鑑定が必要な場合は+5万~10万 | ・収入印紙、切手、登記費用等。 ・鑑定が必要な場合は医師の鑑定費用 |
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通常は2万円程度ですが鑑定が必要な場合は+10万円ほどかかります(鑑定が必要なのは全体の10%前後)
代行の場合(書類作成~申立の補助まで)
上記必要書類の中には収入目録、財産目録、親族相関図等作成に知識が必要な書類も含まれます。
その書類の作成+申立手続きの補助等を専門家に依頼する事も可能です。
その場合は必要書類代金+10万円前後の代行報酬が一般的です。
後見人手続き終了後費用(ランニングコスト)
ランニングコスト。つまりは後見人に対する報酬は被後見人の資産内容を元に裁判所が決定します。
目安としては以下のようになります。ちなみに後見人に対する報酬は被後見人が亡くなるまで必要なコストとなります。
本人(被後見人) | 月額2万円が基本で資産内容が複雑な場合はプラスα | |
申立人(手続き申請をした人物) | 月額3万~5万円が基本で資産内容が複雑な場合はプラスα | |
申立人(手続き申請をした人物) | 月額5万円~が基本で資産内容が複雑な場合はプラスα |
成年後見制度利用の必要費用シュミレーション
例 資産2000万円で後見人をつけた後5年後になくなった場合。
初期コスト 20万円(専門家に申立補助を依頼)
ランニングコスト 3万×5年=360万=180万円
合計 200万

そのため、安易で成年後見制度を活用するのではなくしっかりと検討する事が大切です。
後見人が行うお仕事について
後見人が責任を持って日常的に行わなければいけない業務は『財産管理』『身上警護』『報告』に別けられます。
財産管理の業務一覧
1番大きなお仕事は被後見人の財産管理です。本人のかわりにお金周りの事は基本的に全て後見人が行います。
とはいえ、使用用途については、あくまでも本人のため必要と認められる物に限られます。
また、お金の流れについては家庭裁判者に報告の義務がありますので好きに使って良いという事はあり得ません。
・財産の把握・管理
・収入の受取
・支払
・本人が使うお金の管理
・不動産および資産の管理
・税金の納付・申告
・相続
身上警護の業務一覧
判断能力が低下してしまうと、身の回りの事を自分で決める事が難しくなります。
そのため後見人は医療・介護・食事・愛好品の買い物などの選択と決定のサポートをします(あくまでも決定のサポートで一緒に買い物に行ったりする訳ではありません。
・住環境の検討
・医療環境の検討
・介護施設・福祉施設の契約
・要介護・要支援認定の申請

報告業務
後見人が私的に被後見人のお金を使っていないか?正しく責任を全うしているか?その確認の意味も含めて年に1度程度家庭裁判所から報告を求められます。
・財産状況
・収支の変動
・今後の見通し

成年後見制度を利用する場合の後見人選びについて
後見人は家族でなければいけないというイメージがありますが、実際親族が後見人になる割合は年々低下しており、2017年のデータでは全体の3割以下となっています。
制度開始時は親族が後見人を担当するケースが多かったのですが、年々で親族以外の方が後見人となるケースが増えています。その理由は主に二つ。
親族以外が後見人を担当するケースⅠ 家庭裁判所から親族の候補者が認められない
一つ目の理由は被後見人に相応しい後見人が親族にいないケース。
実は後見人というのは申し立て時の候補者の希望は出せますが、最終的な決定権は家庭裁判所にあります。
ですので、親族の候補人が家庭裁判所から相応しいと判断されない場合は税理士や司法書士等専門家に後見人を依頼する形になります。(親族で候補者を選ぶof家庭裁判所の任せる)
親族後見人が裁判所から認められない理由については下記の記事で詳しく解説しています。
親族以外が後見人を担当するケースⅡ 親族が後見人を希望しない場合
二つ目の理由は親族が後見人を希望しないケース。
実は私自身もそうなのですが、後見人業務に自信がない場合等の理由で始めから専門家を後見人候補として申し立てるケースも少なくありません。
このような場合は基本的に、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士のいずれかに後見人を依頼する形になります(専門職後見人)
専門職後見人に依頼する場合はコストがかかるというデメリットはありますが(月2万程度)複雑な後見人の仕事を任せられる事は勿論、専門的な知識も豊富なのでメリットも多くあります。
専門職後見人についてはそれぞれ資格によって得意分野が違いますので以下の記事を参考にしてください。
成年後見人制度につていのまとめと個人的な意見
このブログを読んでいるあなたは、今どんな状態でしょうか?
介護費用を賄うために親名義の口座からお金を引き出したい。不動産を処分したい。介護施設へ入居契約をしたい。成年後見制度を検討する理由は様々だとは思いますが、中には切迫した情況の方もいらっしゃると思います。
このブログを書いている私自身も成年後見制度について学んでいる時、丁度母の介護で、自分自信がいっぱいいっぱいになってしまったタイミングでした。
そんな不安で押しつぶされそうな時によく分からない制度を勉強するというのは結構しんどい事だと言うのは人並み以上には認識しています。
ですから今回はこういうブログを書かせていただきました。
専門家ではないため分かりにくい事、解説が抜けている部分があると思いますのでそういった所についてはコメントを頂ければここで回答させて頂きたい思いますのでよろしくお願いします。
とにかく1人で悩まないで誰かに相談する事が大切です。
成年後見人についてのQ&A
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成年後見制度が必要とされるケースについてもっと詳しく知りたい場合は以下を参考にしてください。
【もっと詳しく】成年後見人が必要なるケースの具体例を解説