介護老人保険施設(老健)とは?施設の特徴をわかりやすく解説




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介護老人保健施設(老健)とは

介護老人保険施設(老健)
施設運営
地方公共団体、社会福祉法人
入居期間
基本的には3ヶ月程度、自宅復帰が前提
医療体制
リハビリテーションを基本に充実
対象者
要介護2以上~要介護5まで
地域規制
なし
認知症
対応
費用/入所費用
特に無し
費用/入所費用
必要なし
費用/月額
8万円から13万程度
看取り
基本的には非対応
人員体制
3対1。要介護者3人に対して職員1名
居室
多床、個室

介護老人保健施設(ろうけん)というと、従来は中間施設と呼ばれ、病院で急性期治療を終了した後、「いきなり在宅に戻るには無理だろう」と思われる方を受け入れ、医学的な管理の他、リハビリを積極的に行い、在宅へ復帰させるための施設でした。

しかし、現在では介護療養型医療施設の開設が認められなくなったことや、特別養護老人ホーム(特養)の待機期間が長いことから、新型老健と呼ばれる施設も出てきており、老健の役割が少しずつ変化してきています。

特に、入所の期限を設けずに、長期的に入所ができる介護療養型老人保健施設や、在宅復帰を目指す強化型老人保健施設、看取りや認知症ケアを積極的に行う加算型の施設などがあり、利用料金も少しずつ違います。

生活全般のつまずきに対して、専門のスタッフが関わっていくという部分では大きな違いはありませんが、利用される利用者(高齢者)の高齢化と医療度が高くなってきていることには間違いがなく、老健に求められるものが増えて来ています。

また、施設の中で行われる介護(食事・排泄・入浴など)や医療的ケア・リハビリテーションは充実していますが、買い物やお出かけなど在宅で生活していた時には当たり前にしていたことが、出来なくなる場合が多いのも事実です。

老健での生活設備は、トイレ・浴室・洗面所など一通りはそろっていますが、基本共有設備で、個人専用には用意されていませんので、「一人でゆっくりテレビを観たい」「一人部屋で気ままに生活したい」という方には、窮屈な施設であり、自由度としては低めです。

介護老人保健施設(老健)はどんな人が利用できるの?

入所基準
要介護度
要介護度1以上
年齢
基本的には65歳以上
状態
病状が安定しており、入院の必要性がない
その他
高額な薬を使用していない

基本的には上記が入所の条件となります。

ただし、施設によっても細かく条件設定を設けているところもありますので、申し込みの際には十分に説明を受けた方が良いでしょう。

また、少し裏話的な所ではあるのですが、老健ではお薬を購入したり、外部の調剤薬局などと契約していることが多く、薬剤費用は施設もちため、高額な薬を使用している方を入所させるのは、施設としてはメリットがありません。

ですから、以下のようなお薬を使用している人は、老健の申し込みを行っても断られる場合が多いのです。

  1. 抗がん剤
  2. 骨粗鬆症の注射
  3. リウマチ治療薬
  4. 新薬といわれる最近発売されたお薬 など

介護度が同じであれば、「たくさんのお薬を飲んでいる人」と「全く薬を飲んでいない人」から頂く利用料金は同じですので、施設は手出し(お薬代)が無い方が良い訳です。ですから上記のような薬を服用している場合は入所が厳しくなるケースも少なくありません。

介護老人保険施設(老健)の退所基準

老健は、基本的には自宅に戻る為のリハビリ施設です。ですから、終身を前提としていないため退所基準も設けられています。

  1. 3か月毎に開催される入所継続の判定会議において、「在宅復帰可能」となった場合
  2. 介護認定で「要支援」もしくは「自立」と認定を受けた場合
  3. 医療度が高く、入退院を繰り返し入所継続が難しいと判断された場合
  4. 自傷他傷行為が出現してきた場合


入所継続が必要かどうかの判定会議が3か月毎に行われますので、早ければ3か月で「退所です」と言われる可能性はあります。

明らかにまだ在宅復帰が難しい状態であれば、「入所継続」となります。

ただし、現実問題として、老健でリハビリした後、必ずしも在宅復帰できる方ばかりとは限らず、「特養待ち」「グループホーム待ち」「自宅は処分し、帰るところがないため、方向性を模索中」等々の理由から、数年入所している方も実際にはいらしゃいます。

とはいえ、何度も言いますが、国の方針として、老健は在宅復帰のための施設ですので、終身を前提として入所する事はおすすめしません。

介護老人保健施設(老健)の環境は?どんな人が働いてるの?

老健の人員基準は入所者100名に対して以下のようになっています(分かり易くするために特別養護老人ホームの人員体制も記載)

老健
特養
医師
1名(常勤) 1名(非常勤可)
看護師
9名 3名
介護職員
25名 31名
理学療法士、作業療法士もしくは言語聴覚士
1名 義務無し
支援相談員1名
1名
栄養士
1名

上記の図を見て貰えれば分かるように、特別養護老人ホーム(特養)や療養型病床群との大きな違いは、医師の数やリハビリの専門スタッフを必置としているところです。

特養は医療的ケアが極めて少なく病状が安定している人を受け入れていますので、医師は常勤ではなく非常勤となります。

療養型病床群は、医療度が高い人が多くなるため、医師は常勤3名となっています。

老健では、高齢者を中心に医療・看護・介護・リハビリ・栄養・相談がキチンと手をつないだ形を取り、上から下へ連絡や指示が来るのではなく、横のつながりで仕事をしているというイメージです。病院とは違い、生命の危機があまり近くないので、施設の雰囲気としては明るいといえます。

介護老人保健施設(老健)はどんなサービスを受けられるの?

生活全般(食事・排泄・入浴・更衣など)の介護や医療的ケアを受けることができ、喀痰吸引や胃瘻(PEG)・経鼻カテーテルの管理の他、点滴の管理、服薬管理、尿道カテーテルの管理、褥瘡処置、肺炎や帯状疱疹・尿路感染治療なども行います。

また老健の一番の売りでもある、「生活リハビリ」と「認知症短期集中リハビリ」をメインで入所を申し込みされる方が多いです。

生活リハビリとは


病院で行われるリハビリテーションと大きく違うのは、関節の可動域が「どれくらい良くなったか?」や「〇〇m歩けるようになること」が大きな目標ではないことです。

実際にご自宅で生活する場合、〇〇mも歩けなくて良い場合や、手が上に上がらなくても住宅の環境さえ整えれば、全然問題無いことが多いので、老健では生活を送って行く上で何が必要で何ができるのか?を見極めてリハビリを行って行きます。

認知症短期集中リハビリとは

認知症の方の介護で一番大変なのは、BPSDといわれる認知症の周辺症状ですので、そのBPSDを改善もしくは軽減することを目的に認知症短期集中リハビリを実施します。

そしてBPSDは、生活環境や対応により良くも悪くもなりますので、認知症の中核症状は致し方ないこととして受け止めたとして、何とかBPSDを改善したいものです。

短期集中リハビリを受けるには、老健入所日もしくは通所開始日の属する月から起算し3か月以内の期間のみとなります。そして、それには医師の指示がないとなりません。

また、老健によってはリハビリのスタッフ数の関係から、「短期集中リハビリ」を提供していない施設もありますので、事前に調べた方が良いでしょう。

簡単に中核症状とBPSD(周辺症状)についても説明いたします。

中核症状とは

認知症の直接的な原因であります「脳が壊れた」状態で起こる症状を「中核症状」といい、以下のような症状が現われます。

中核障害
記憶障害
(エピソードをすっぽりと忘れてしまう)
見当識障害
(日時・曜日・場所や方向感覚が失われる)
判断力の障害
(目的を持った一連の行動が忘れてしまい出来ない)
失語・失認・失行
(上手く話せない・計算ができない・道具を使えない)

中核症状は、今の医学では治すことができません。そして、ゆっくりであったとしても進行はしていきます。

BPSDとは

BPSD(周辺症状)とは、「行動・心理状態」ともいわれ、元々の性格や環境などが大きく影響し、人によって異なる症状が以下のような形で出てきます。

BPSD(周辺症状)
徘徊
自宅等が他人の家と認識してしまう
弄便行為
便を壁に付けたりする行為
物盗られ妄想
ものを無くすようになり、取られたと思ってしまう
暴言や暴力
普段温厚だった人が短期になってしまう
帰宅願望
自宅やもう無い場所等に帰りたがる

ご家族やそばで介護している方々が苦労されるのはこの「BPSD」の出現がある時です。

BPSDは、認知症高齢者が「自分は何だか変になって来た」と自覚している頃に出て来ますが、そう表現してしまうと「自覚しているのか。それなら嫌がらせじゃないか?」と思われてしまうかもしれません。

認知症高齢者の方々は、今まで出来ていたことが「出来なくなった」ことに、苛立ちや焦りがあり、人に迷惑をかけてしまうことにも、非常に情けない思いと自分の存在価値を見出せない状態になっているのです。

それを何とか、元の自分に戻ろうと努力している姿でもあります。そんな時に「何やってるの!?」とか「隣の〇〇さんは、出来ているのに」などと心ない言葉を言ってしまうと高齢者は非常に傷つき、周辺症状はさらに増悪していくのです。

しかし、認知症高齢者を温かく見守り、生活のつまずきなどを見極め、その方にあったアプローチを行えば、周辺症状は改善することが分かっており、老健で行われる「認知症短期集中リハビリ」は有効と考えられています。

短期集中リハビリで行われる具体的な内容とは

認知症のリハビリ
回想法
好きだった映画、旅行に出かけた思い出、学生時代の事など、記憶に残っている昔の出来事を思い出す事によって、脳の活性化を図り、心の落ち着きや、充足感を取り戻す方法
学習訓練療法
簡単なパズル等で脳を刺激する事によって、認知症の進行を遅らせる方法。
園芸療法
花や植物、野菜などを育てる子とで感情の安定や意欲の促進を図る方法
音楽療法
好きな音楽を聴いた入り、簡単な楽器を演奏したり、歌を歌ったりする事で感情の安定や意欲を取り戻す方法

以上の内容を見て頂ければ、お分かりかと思いますが、すごく特別なことが行われている訳ではありません。

ただ一人の高齢者のために、その時間を共に過ごし、一生懸命関わろうとする姿が認知症高齢者の心に届いているということなのです。

認知症高齢者は「自分を大事にしてくれる人がまだいる」という安心感と、自分の存在価値や役割を見出せたことに満足感を味わい、BPSDが改善されるのです。これが老健で行われている短期集中リハビリテーションです

料金はどうなっているの?

気になる老健の料金についてですが、有料老人ホームやグループホーム・サービス付き高齢者向け住宅とは違い、入所時に一時金などは不要で、食費や居住費・生活に必要な雑費などを含めても月額15万円前後となります。

さらに負担軽減措置も設けられていますので、年金などの所得が少ない対象者には居住費や食費の減免を受けることが可能です。(手続きが必要)

≪従来型個室≫
居住費
49200円(1640円/1日)
食費
41400円(1380円/1日)
介護保険料
20850円(695円/1日)~27120円(904円/1日
≪従来型個室・在宅強化型≫
居住費
49200円(1640円/1日)
食費
41400円(1380円/1日)
介護保険料
21990円(733円/1日)~29310円(977円/1日
≪多床室≫
居住費
:11100円(370円/1日)
食費
41400円(1380円/1日)
介護保険料
23040円(768円/1日)~29430円(981円/1日)
≪多床室・在宅強化型≫
居住費
:11100円(370円/1日)
食費
41400円(1380円/1日)
介護保険料
24360円(812円/1日)~31770円(1059円/1日)
≪ユニット型≫
居住費
59100円(1970円/1日)
食費
41400円(1380円/1日)
介護保険料
介護保険料:23220円(774円/1日)~29550円(985円/1日)
≪ユニット型・在宅強化型≫
居住費
59100円(1970円/1日)
食費
41400円(1380円/1日)
介護保険料
介護保険料:24480円(816円/1日)~31890円(1063円/1日)
≪ユニット型準個室≫
居住費
居住費  :49200円(1640円/1日)
食費
41400円(1380円/1日)
介護保険料
介護保険料:23220円(774円/1日)~29550円(985円/1日)
≪ユニット型・在宅強化型≫
居住費
居住費  :49200円(1640円/1日)
食費
41400円(1380円/1日)
介護保険料
24480円(816円/1日)~31890円(1063円/1日)

個室・多床室・ユニット型・ユニット型準個室の他、在宅強化型かどうかによっても料金に差がありますし、これ以外でも施設で必要だと判断したサービスの加算や雑費などもプラスされますので、老健をお申込みの際には、料金の総額をしっかりと確認しましょう。

介護老人保健施設(老健)のメリットは?

老健のメリットとしては以下の点が上げられます。

  1. 医師の診察を受けることができ、医療的なケアも充実しているため安心できる。
  2. リハビリの専門スタッフがいる。
  3. 入所時の費用はなく、月額費用も安め。

在宅復帰を目指している施設のため、ベッドの回転率が割と良く、申し込みから待期期間があまりなく入所できることも魅力の一つです。

そして、一度退所しても、必要になればまた入所し、通所サービス(デイケア)や短期入所などを利用しながら、1日でも多く在宅で生活を送れるというメリットがあります。

何とか最期まで、ご自宅で過ごしたい方には理想の施設といえるのではないでしょうか。

介護老人保健施設(老健)のデメリットは?

老健のデメリットは以下の点です。

  1. 終身利用ができないため、必ず住処を変えなければならず、落ち着かない。
  2. 多床室になる場合が多く、プライバシーはあまり守られない。
  3. 自由に外出したり、買い物に行ったりが一人では出来ない。

入所した時点で、「今後の方向性」を決めておかなければならないため、申し込みした時点で焦らされるような気持ちになります。

決して「追い出そう」という意図ではありません。「在宅に戻れるチャンスを逃さない」という施設の心意気を理解して頂きたいと思います。

また、老健入所中というだけで、特養申請中の方は順番が後回しになることもあり得ます。それ以外では、施設のルールに則って生活しなければなりませんので、窮屈な印象を受けるかもしれません。

介護老人保健施設(老健)に向いている方

要介護度が重く、寝たきりであったとしても、在宅を続けている方はたくさんいらっしゃいますので、「自宅に戻りたい」という強い意志がある方には、絶対におすすめをしたい施設が老健です。

できるだけ住み慣れた在宅で、通所サービスや短期入所を利用しながら、とお考えの方は、老健しかありません。あと、人との関わりをどんな形でも良いから持ち続けたい方にも、おすすめです。

いつも利用している老健であれば、困った時には何としてでも助けてくれようとしてくれるのが老健ですし、高齢者介護のパイオニアといっても過言ではありません。

介護老人保健施設(老健)を検討中の方にアドバイス

老健を探す場合のポイントは、以下の通りです。

  1. 経営母体がどこにあるのか?
  2. 老健以外の施設を持っているのか?
  3. 認知症に強いかどうか?
  4. 施設長は何科が専門なのか?
  5. リハビリスタッフは何名体制か?

例えば、老健の経営母体が病院であれば、その病院は何科が専門なのか?は意外と大事になります。

なぜかと申しますと、例えば精神科が母体の老健ですと「認知症高齢者に強い」という特徴を持っています。

脳神経外科が母体であれば、「意識障害」「脳梗塞」など、高齢者に起こりやすい病状をすぐに対応してもらえるということにもなります。

あと、老健は医師が施設長となりますので、「何かおかしい」となれば施設長である医師に診察を依頼しますが、専門科が内科や外科などではなく小児科や産婦人科の場合もあります。

そうなると「自分は医者だが、専門以外は分からん」ということにもなり兼ねません。

ですから、近郊に老健が数件ある地域にお住まいの方は、医師の専門分野まで調べておくと安心です。

また、リハビリのスタッフも1名以上配置しておけば良いので、最悪リハビリスタッフ1名で運営しているところもあります。

そうなると、1名で100名のリハビリを担当するのは、かなりの至難の業となりますので、申し込みの際には、リハビリのスタッフの数も確認しておいた方が、より安心かと思われます。

まとめ

私の個人的な見解ではありますが、老健は「終の棲家」ではなく基本「在宅復帰」を目指していますので、日中何かあったとしても医師も看護師もいますから、働いている職員の精神衛生が良く、明るい雰囲気なのが老健です。

介護職員が安心して働ける環境であれば、利用している高齢者の方のことも考える余裕がありますし、忙しくても職場内から笑い声が聞こえてきます。

しかし、命と向き合っている病院では、職場内から笑い声が聞こえるのはご法度です。
(だからといって、暗い訳ではありませんが)

そういう点からも、前向きになっている高齢者の方と共にいられるのは、働くものにとっても癒しや励ましになり、またその姿をご家族がみて喜ぶという良い循環ができます。

障害を持ちながらも、何とか在宅復帰を目指す高齢者を、一生懸命応援する施設が老健ですので、色々な施設がありますが、その一つの選択肢をして検討してみてはいかがでしょうか。




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