認知症による徘徊の原因と対策【具体的な予防方法を解説】




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認知症による徘徊(はいかい)は、事故や過労の他に脱水などから、生命の危険性があり、それを介護する側も、目が離せなく、身体的にも精神的にも大きな負担となります。今回は、認知症による徘徊の原因と対策について解説いたします。

認知症による症状の徘徊とは?

認知症になるには、さまざまな原因疾患がありますが、その中でもアルツハイマー型認知症が多く占めており、共通の症状としてみられるものの一つとして徘徊があります。

かつては問題行動と呼ばれ、介護を行う側からは厄介な行動として扱われ、その行動を抑えるために試行錯誤繰り返されてきました。


認知症による徘徊は、一見理解の出来ない行動に思えますが、意味もなくウロウロしている訳ではなく、よくよく観察をしていますと本人なりの理由や目的があります。

とはいえ、徘徊している本人は、その理由や原因を上手く説明できませんし、ときにはその理由さえ忘れてしまいますので、周囲で見守っているものは理解困難でさらに疲れなどが出てくると、感情的なもつれに発展し、関係性までもが崩れるという状態になります。

家の中でウロウロするだけであれば、そんなに問題となることはありませんが、外へ出てしまう徘徊ですと、周囲の方までを巻き込んでしまうことが多く、「認知症による徘徊」は社会的な問題になるのです。

認知症はさらに危険認知能力などの低下もしますので、線路内に入ってしまい命を失なったり、沼や池に落ちてしまう・山や林に入って迷子になるなどの事故になると、ご家族が世間から異常なまでの非難を浴びることでしょう。

そうならないためにも、認知症による徘徊の原因や対策などを知ることが必要となる訳です。

徘徊が起こる原因と、その背景は?

徘徊が起こる原因には、以下のことが考えられます。

  1. 見当識障害(時間・日付・場所が分からない)
  2. 判断力の低下
  3. 記憶障害
  4. 過去の仕事や役割の再現
  5. 居場所がない
  6. 不適切なケアから逃げたい
  7. 不安感や焦燥感 など。

認知症の方に対して良く聞くのは「嫌な事も忘れて幸せだよね」という言葉です。

この言葉を聞く度に、私は悲しくなるのですが、認知症の方は忘れたくて忘れているのではないのです。覚えていたくても病気で忘れてしまうのです。

毎日、思い出のアルバムから写真が1枚ずつ減っていき、最後はアルバムの中に写真が1枚も残っていなく、天涯孤独の人生をイメージして下さい。(認知症高齢者には親兄弟も子供も知っている人は誰もいない淋しい人生なのです。)

「知っている人はいないのか」「昔の家に行けば誰かいるのではないだろうか」「以前働いていた場所に行けば、何とかなるのではないか」と、居てもたってもいられない心境だと理解すれば、徘徊は必然だと思いませんか?

認知症の方は「何だか最近おかしいな」「こんなことも分からなくなった」「自分が自分ではなくなってきた」「自分が壊れていく」と実は自覚しています。

そんな不安感や焦りが、周囲を困らせる徘徊を含む周辺症状となっていくのです。

徘徊への対応の基本は?

認知症の方は、頭ではなかなか理解することは困難ですので、説得は効果的ではありません。

ケアする側も、一生懸命説得すればする程に感情的になってしまい、相手に理解してもらえないと口論になったりします。

ただし、認知症の方は、頭の中で整理することはできませんが、相手が自分の「敵か味方か」「自分の好意を持っているか」「自分のことを嫌がっているか」「怒っている」などの感覚は非常に研ぎ澄まされています。

ですから、まずは徘徊する目的・理由をよく観察することです。

目的が達成できなければ、徘徊は続きますので、できるだけ早く徘徊の理由を知り目的を達成するためのケアをしましょう。

暫くは、ご本人の話や訴えをよく聞き、一緒に行動する必要があります。

話も聞かず、徘徊の理由も理解せずに、何とか行動だけを止めようとすれば、互いにストレス度が高くなり、症状は悪化をしますし、それ以外のケアにも支障を来す結果となります。

徘徊は病院での有効な治療方法はあるの?

病院に入院して治療を行う場合、有効な治療法はあるのかという部分ですが、この治療を行えば必ず治るというものはありません。

興奮を抑えたり、昼夜逆転を改善するために薬を使用する場合はありますが、徘徊を止める効果のある治療薬はありません。

認知症には中核症状と周辺症状といわれるものがあり、処方される薬剤が違います。

中核症状に対しての薬
アリセプト
レミニール
リバスタッチ
貼り薬:薬を嫌がる方には効果的
周辺症状に対しての薬
メマリー
抑肝散
クエチアピン
リスペリドン

しかし、周辺症状に対しては非薬物療法の方が必要といわれており、薬物においては顕著に効果がみられる方と、そうではない方がいると考えていた方が良いです。

≪認知症中核症状とは≫

認知症と診断された場合に、誰にでも現われる症状のことを中核症状といいます。

・記憶障害
・見当識障害
・判断力の低下(実行機能障害)
・失語・失認・失行 など。

≪認知症周辺症状とは≫

認知症と診断されても、症状が出る場合と出ない場合があり、さらに環境変化やストレス・不適切なケアにより増悪し、適切なケアにより改善される症状をいいます。

・徘徊
・帰宅願望(入院中に家に帰りたいというのは当たり前の反応で帰宅願望とは言わない)
・物盗られ妄想
・せん妄
・幻覚・幻聴・幻視
・うつ
・異食
・暴力・暴言
・失禁や弄便行為
・睡眠障害(不眠や昼夜逆転も含む) など。

認知症の詳しい治療法を知りたい方はこちらをご覧ください。
(認知症の治療原則と選択肢)
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/sinkei_degl_c_2012_04.pdf

具体的な徘徊の予防方法と改善策は?

徘徊するには、本人なりの理由や目的があることをまず念頭におき、本人の訴えや話に耳を傾ける姿勢が大事となります。


ケアする側が聞く態度でない時や、そっけない返事をされると、それだけで「敵認定」される場合がありますので、人の話を聴く姿勢が基本です。

認知症高齢者は、自分の気持ちや考えを上手に表現できませんので、ケアする側が「気持ちを汲み取る」「察する態度」で、あまりにも先回りしないようにできるだけ、寄り添う形で関わっていきます。

徘徊の改善策の具体例

  1. 一緒に歩く(目的を見つける)
  2. 疲れた時には手を差し伸べる(安心感)
  3. トイレなどを時々誘ってみる
  4. 趣味活動を一緒に行う(気分転換になったり、徘徊を忘れたりする)
  5. デイサービスなどを利用する
  6. 説得はしたり怒ったりしない(本人は正しいと思っているので否定しない)など

徘徊が起きた時の対策

  1. 隣近所や地域の民生委員の方々には隠さず徘徊があることを伝え協力を得る
  2. 衣類や持ち物に名前や連絡先を記載する
  3. 警察にも情報提供をしておく
  4. GPS機能を利用する

適切な環境と信頼関係が築ければ、認知症の周辺症状といわれる厄介で困った行動は改善されていきます。

自分がされて「嫌だな」と思うことを認知症高齢者にしてはいけません。


自分がされたら「嬉しい」ことだけを考えてケアしてみると、意外と良い案が浮かんでくるかもしれません。認知症高齢者は、それぞれ顔や性格が違うように、ケアの仕方も違って当然なのです。

認知症高齢者に学ばせてもらっていると感謝の気持ちで接してみると、双方幸せになれるのではないでしょうか。

具体的な徘徊の事例と対応

夜になると各病室を覗く男性高齢者

毎晩、夜になるとお部屋を覗きに来るので、女性患者さんから苦情が出ました。その男性高齢者の職業は「夜間の警備員」だったのです。女性の寝顔を見たいのではなく、職務として「安全」「保全」を全うしていただけでした。女性患者にもその旨を伝え、一見落着しました。


徘徊の目的が理解できましたので、看護職員はその男性が役割を全うできるよう、転倒の危険性があるような床に配慮したり、環境を整えることで、それ以上の周辺症状や周囲に迷惑がかかるようなことは起きませんでした。

夕方になると帰るという女性高齢者

入院による環境変化から、せん妄状態が起き夕方4時になると決まって「帰る」という女性高齢者。

理由は「子供が学校から帰ってくるからご飯支度をする」といいます。まだまだ治療が必要な状態で、退院はできませんでしたので、娘さんに協力を得て夕方に元自宅跡地へ連れて行くことにしました。もうすでに自宅はありませんので、その場所に行くと思い出し「あ~そうか。もう家は無かった。子供も大きくなったんだった」と理解し病院に戻ってきます。

そういうことを何度か繰り返して行くと、病院生活にも慣れ夕方に「帰る」とはいわなくなりました。

この2つの事例から学んだことは「嘘はついてはいけない」ということと認知症でもキチンと向き合って、本人の望む形をできる限り行えば、頭では理解していないかもしれませんが、「心で納得する」ということです。

認知症高齢者は、こちらの都合を色々と伝えても理解することが困難ですので、あたかもありそうな「嘘」は全く通じません。

そして正直に「病院だから」「治療中だから」と言っても通じないのです。

それよりも、病院であっても、治療中でも望んでいることをできるだけ可能な形にすることをケアする側が考えれば良いのです。

まとめ

認知症の周辺症状がピークに出現している時には、「この状態がいつまで続くのだろう。私達の方が先に参ってしまう」と思われるご家族の方が沢山いらっしゃいますが、徘徊は思いのほか体力を使い、体を酷使しますので、正直「徘徊されて何年も苦しんだ」という方はあまり見たことがありません。

そして、認知症は必ず進行しますので、いずれ脳の萎縮が進み、殆ど動かない・喋らない・食べないという状態になります。

認知症高齢者も愛する家族や自分の世話をしてくれる方を困らせようとか思っていません。

殆どの高齢者の方は「迷惑だけはかけたくない」と心底思っていますので、例え徘徊やケアする側を困らせる周辺症状が出たとしても、人生のうちの一時と思い優しく関わって欲しいと思うのです。




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